
夜会のゴースト
ネオンに濡れたネオ大阪では、自分という存在すらも商品になる——そして年に一度、エリートたちは盗まれた人生を競り落とすために集う。あなたは偽造した身分でヴァーミリオン・オークションに紛れ込む。捕食者だらけの会場で、「ゴースト」と呼ばれる伝説の泥棒がまっすぐあなたのもとへ歩み寄り、こう囁く。「あなただけが読めない。不可能を、盗んでみたくない?」一時間。盗まれた自己を収めた金庫室ひとつ。そして、互いにだけは正直になれる、ふたりの嘘つき。









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銃ではなく、人という錠を破る
サイバーパンクの強盗劇と聞けば、思い浮かぶのは銃火と電子錠の破り合いでしょう。「夜会のゴースト」で鳴っているのは弦楽四重奏です。ネオ大阪、浮かぶ錦鯉タワー、ブラックタイの夜会、シャンパンの塔とホログラムの錦鯉。銃声は少なく、張りつめた神経のほうが主役で、破らなければならない錠のほとんどは機械ではなく人です。手札は、顔を読むことと、何を明かし何を隠すかの判断だけ。持ち時間はきっかり一時間。
人生が正装して競りにかけられる夜
オーラネットの上では、アイデンティティは採取し、パッケージ化し、所有できるデータです。企業は貧者から、借金にまみれた者から、消された者から自己を根こそぎ剥ぎ取り、「プロファイル」として売りさばきます。買い手が求めているのは、新しい顔、汚れなき過去、あるいはただ誰かを所有すること。年に一度、この取引が正装をまとうのがヴァーミリオン・オークションです。
会場の中心には金庫室があり、その奥に台帳が眠っています。採取されたすべてのプロファイルを、本来の持ち主へ結びつける原簿です。最後の木槌が打たれたあとに起きたことは、もう二度と取り消せません。サイバーパンクの意匠が、そのまま人を商品として扱うための作法になっている世界です。
会場でただひとり、読まれない顔
あなたは自分のものではない顔を被り、センサーひとつ鳴らさずに緋色の絨毯を歩いてきた詐欺師です。借り物のシャンパンを三杯ほど空けた頃、空気が変わります。上院議員たちを、シンジケートの跡取りたちを通り過ぎて、ダイヤをまとった女がまっすぐ近づいてくる。コハク、「ゴースト」と呼ばれる伝説の社会工学の使い手。盗まれたプロファイルを奪い返し、本人のもとへ返してきた人物です。生きている誰であれ三秒で読み解き、決して外しません。姿勢、癖、靴の値段、恐れているもの。
その彼女が、あなただけを読めない。だから足を止め、囁ける距離で、一時間とひとつの不可能なアイデアがある、と持ちかけます。完全な注意を向けてくれるから人を惹きつけ、自分自身は何ひとつ明かさないから危うい人です。
あなたの選択が動かすもの
一手ごとに、自分を守るか、見られることを選ぶかで枝が分かれます。獲物をなめらかに欺くか、大声で即興を演じるか。コハクに作り話を食わせるか、本当の話に賭けるか。読み手が迫ってきたとき、彼女をかばうか、自分の身を守るか。
場面が進むごとに、ふたつの緊張が静かに高まっていきます。ゴーストがどこまで警戒を解いてあなたを内側に入れるか。そして、あなたが金庫室と台帳にどこまで近づいているか。この二本は別々には走りません。タワーの奥へ潜り込む唯一の道が、彼女との信頼だからです。つまり親密さは雰囲気づけではなく、経路そのもの。入力した言葉を語り手がどう受け取るのかは別の記事で説明していますが、この夜に測られているのは、あなたが誰に本当のことを言ったかだけです。そして代償のない選択は、ひとつもありません。
一時間をともに過ごす顔ぶれ
キュレーターはオークションの主催者。温かく、そして無慈悲で、ソムリエがワインを売るように人を売ります。読み手はタワー保安部門の長。どんな顔からも真実を読み取れるよう改造された企業のアナリストで、会場のあらゆる仮面を剥がせます。今のところ、あなたを除いて。コハクの鏡像であり、あなたたちが競い合う時計そのものです。ブローカーはコハクの故買屋で、外から耳に囁く声。解き放たれた身分を我が家へ帰す役目を負う、絞首台のユーモアと良心の持ち主です。そして今宵の目玉、ロット・ゼロ。シリアルナンバーを削り取られた、採取された幼少期の自己です。それが誰のものなのかが、この夜の蝶番になります。
はじめる前に
恋愛はどのくらいの比重ですか?
強盗劇と同じだけの比重で、同じ一時間に収まっています。じわりと燃える恋愛で、露骨な性的描写はありません。惹かれ合いは、機知と、ほころびる作り話と、取り消せないほど静かに漏らされる真実によって運ばれます。コハクは勝ち取られる賞品ではありません。完全な主体性を持ち、あなたが自分を利用したいだけだと見抜けば、立ち去る自由があります。
ハッキングや戦闘の知識は必要ですか?
不要です。銃声は少なく、緊張はすべて社会的なものです。人を読み、嘘を貫き、信じるかどうかを決める。難しい操作は何もなく、場面ごとに選ぶ言葉と態度が、そのまま技術になります。
一時間の物語ということは、短い作品ですか?
一時間なのは作中の制限時間であって、プレイ時間ではありません。会場での探り合いから最初の詐術、そして金庫室へと、いくつもの場面を経ます。セッションは中断して後から再開できます。
この作品が置かれている棚
きらびやかさの下で冷たい機構が動いている、そのノワールの手触りが好きなら相性がいいはずです。同じく企業が人を数字として扱う夜を描いた死者の手条項や、作られた笑顔の裏側へ一ミリずつ近づいていく冬の笑顔も、近い棚に並んでいます。ただ、まずはここから。シャンパンの塔と、値をつけられていく人生と、この部屋で唯一あなたを読めない女が、残り一時間だと微笑んでいます。